巡礼

霊場巡拝のすすめ(H17.8.23)
-菩提心10号(H16.3.15を一部改)-

○はじめに

三月になり、寒さも和らぎ始めると、箸蔵寺に白い着物を着て杖をついた人たちがたくさん訪れ始めます。霊場の巡拝に来られている「お遍路さん」と呼ばれる人たちです。

本来「お遍路さん」とは四国八十八カ所を巡拝(四国遍路)する人のみを指す言葉なのですが、最近は別格二十霊場や四国三十六不動霊場、さらには四国以外でも、白装束を来て霊場を巡拝している人はみな「お遍路さん」と呼ばれるようになってきているようです。

この霊場巡拝が、このところ静かなブームになっているようです。

○様々な霊場巡拝

古くは、霊場巡拝は信仰心を持った人たちが、色々なお願いや悩み事を持って霊場を巡るものでした。全ての霊場寺院を参拝したときに、願い事が叶ったり、悩みを消滅させることができると信じ、一心に霊場巡拝を行っていたのです。そのスタイルはほとんどの人が徒歩で孤独に巡拝する厳しいものでした。

しかし、現在は色々な目的を持った人々が、様々なスタイルで霊場巡拝を行っています。

たくさんのお寺を見てみたいという観光目的の人、四国の自然や人々とのふれあいを楽しみに来ている人、退職や卒業を機に、一人で歩くことでもう一度自分を見つめ直そうとする人、他の霊場巡拝の方々との出会いや交流が目的の人、純粋に健康のためなどなど・・・。

巡拝の手段も様々です。徒歩、自転車、乗用車、大型バスなど、多種多様な交通手段が使われています。

巡拝の方法も色々です。一度に全霊場を回る「通し打ち」もあれば、何回かに分けて回る「区切り打ち」、またあえて札所を数の大きい方から回る「逆打ち」などもあります。

このように、以前は苦しい修行であった霊場巡拝ですが、現在は様々な人が様々な目的をもった新しいスタイルの霊場巡拝が生まれてきています。

○霊場巡拝の魅力

霊場巡拝の魅力はどのようなところにあるのでしょうか?

やはり一番は、今も昔も変わらぬ、何かを成し遂げる喜びではないかと思います。
修行の旅、供養が目的の旅、自分探しの旅、ふれあいの旅・・・。他にも色々な目的はあるかと思いますが、目標を決めて努力し、そこに到達したという達成感は何物にも代え難いものがあると思います。

次に考えられるのは、日常を離れて数多くの新鮮なものと出会える、旅行としての魅力でしょうか。
霊場には番号の数だけお寺があります。大きなお寺や小さなお寺。街の中のお寺や山の上、海の近くのお寺など、様々なお寺を見て楽しみ、比べて楽しむことができます。
また、人との交流も楽しみの一つです。団体での巡拝ならば、時間をかけてじっくりとした交流の時間を持つことができ、一人での歩き遍路では、他のお遍路さんとのふれあいや、四国の人たちの心温まるお接待に触れることができます。

また、霊場巡拝の別の魅力は、自分だけの納経帳や、お軸が作れることではないでしょうか。
世界で一つの納経帳やお軸が完成すると、その喜びも格別ですし、霊場巡拝の楽しかった出来事を思い起こすことができます。

それに、霊場巡拝では霊場独特の授与品を集める楽しみもあります。
現在は四国の中でもたくさんの個性のある霊場があり、それぞれ個性に富んだ授与品が用意されています。納経帳に御朱印を受けたときに一緒に頂戴するお御影(みえ)は、同じものが無く、それぞれのお寺の特徴が出ています。カードのように集めたり、貼り付けてお軸を作ったりなど、色々な楽しみ方があります。

また、別格霊場ならば、各寺院で一個ずつ授与される数珠玉をあつめて二十カ所念珠を作ることができ、不動霊場なら胸飾りを作ることができます。

このように、「何かを集める楽しみ」も、霊場巡拝の楽しみの一つであるといえます。

○おわりに

このように、以前は宗教的な目的で行われていた霊場巡拝が、現在は様々な目的で数多くの人に楽しまれているように感じられます。

古くからの信者さんにはこのような状況を疑問視する方もいらっしゃるようですが、私はそれでもいいと思っています。目的はどうであれ、「お寺に訪れる」というご縁が生まれたのですから。

「高野の昼寝」(こうやのひるね)という言葉があります。高野山という聖域で昼寝をしていると、清らかな空気や、遠くから聞こえる僧侶のお経の声、かすかに臭うお香の香りなどを感じ取り、昼寝をしているだけでも知らず知らずのうちに信心に目覚めるという意味です。

ですから、霊場巡拝も、どのような目的でお寺にお参りしてもいいと思っています。お寺に足を踏み入れたことがご縁で、本尊様に出会い、建造物や彫刻に出会い、お寺の人間や他のお参りの信者さんに出会い、一緒にお経を唱えたりしながら何かを感じて帰っていただければ、そこからが始まりだと思っています。また、そういう何かを感じてもらえるようなお寺であるよう、努力していくことがお寺の役目だと考えています。

皆さんも形にとらわれず、まずは近くのお寺からでも巡拝を始めてみてはいかがでしょうか?

当サイトの内容は、ご自由にリンク、引用して頂いて結構ですが、著作権を放棄するものではありません。
箸蔵寺による著作物の引用や転載の際は引用・転載元を明記していただきますよう、お願い申し上げます。