箸蔵はんの怒り

箸蔵はんの怒り

徳島新聞Web 阿波の民話より
(上)http://www.topics.or.jp/special/122545497817/2008/08/121781589414.html
(下)http://www.topics.or.jp/special/122545497817/2008/08/121790706088.html

とんと昔(むかし)、あったと。

阿波(あわ)の西(にし)のはしにある箸蔵山(はしくらやま)は不思議(ふしぎ)な山(やま)じゃ。

讃岐(さぬき)の金比羅(こんぴら)はんとは五里(ごり)も離(はな)れとるが、金比羅(こんぴら)はんにお参(まい)りする人(ひと)が、箸(はし)を捨(す)てると、ほの箸(はし)は一本残(いっぽんのこ)らず、箸蔵(はしくら)はんにささり、ほれが、このお山(やま)の樹木(じゅもく)となって育(そだ)つそうな。はしくらちゅう名前(なまえ)は、こんなことから名(な)づけられたもんじゃ。

あるとき、在所(ざいしょ)の百姓(ひゃくしょう)が薪(たきぎ)を取(と)りに、お山(やま)に分(わ)け入(い)ったそうな。落(お)ちとる木(き)を拾(ひろ)いよる間(あいだ)はよかったが、欲(よく)が出(で)て生(は)えとる木(き)を切(き)ろうとした。ところが、にわかにお山(やま)が鳴(な)り動(うご)き、大風(おおかぜ)が吹(ふ)き出(だ)した。

ところが、百姓(ひゃくしょう)は気(き)にせんと、木(き)を切(き)りつづけた。すると、今度(こんど)は手斧(ちょうな)の刃(は)がボロボロにこぼれてしもうた。

百姓(ひゃくしょう)はわんくへもんて、腹立(はらだ)ちまぎれに、お山(やま)の悪口(わるくち)を言(い)うたそうな。

百姓(ひゃくしょう)がお山(やま)の悪口(わるくち)をいいかけると、急(きゅう)になんやら、家(いえ)の屋根(やね)にパラパラと降(ふ)りかかってきた。おぶけて飛(と)び出(だ)してみると、お山(やま)から石(いし)つぶてがビューン、ビューン飛(と)んできよった。

おとろしゅうなった百姓(ひゃくしょう)は、家(いえ)のもんを連(つ)れて、命(いのち)からがら逃(に)げ出(だ)した。逃(に)げながらわんくを見(み)ると、岩(いわ)や大木(たいぼく)が飛(と)んできた。ほのうち家(いえ)はめちゃめちゃにつぶれてしもうた。

この話(はなし)を聞(き)いた在所(ざいしょ)の鍛冶屋(かじや)が

「ほんなあほなことが、あってたまるか」

ちゅうて、手斧(ちょうな)を持(も)ってお山(やま)へやってきた。ほして、片(かた)っ端(ぱし)から立木(たちき)を切(き)り出(だ)した。

ほれ見(み)ろちゅうて、切(き)った木(き)を炭(すみ)に焼(や)いて、ふいごで火(ひ)を起(お)こそうとした。すると突然(とつぜん)、炭(すみ)が火(ひ)を噴(ふ)いて、辺(あた)り一面(いちめん)に飛(と)び散(ち)った。ほの火(ひ)が在所(ざいしょ)まで飛(と)んで、鍛冶屋(かじや)は丸焼(まるや)けになってしもうた。

ほのうち、鍛冶屋(かじや)はぐいぐい引(ひ)っ張(ぱ)られたかともうと、凧(たこ)のように大空(おおぞら)へ舞(ま)い上(あ)がり、箸蔵(はしくら)はんの方(ほう)へ向(む)こうて飛(と)んでいてしもうたそうな。

おーしまい。

◆注釈

【ほの】その
【ほれ】それ
【ちゅう】という
【しもうた】しまった
【わんく】自分(じぶん)の家(いえ)
【おぶけて】驚(おどろ)いて
【わんく】自分(じぶん)の家(いえ)
【ほの】その
【しもうた】しまった
【ほんな】そんな
【ちゅう】という
【ほして】そして
【ほれ】それ
【ともうと】と思(おも)うと


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