菩提心34号-「塗香」のお話-

第34号特集.「塗香」のお話(H29.9.3)

「菩提心」では、これまでに何度か、仏壇のお供え物と六波羅密のお話をしてきました。

私たちが無事に悟りを開くためにやらけなればならない六つの大切な行い「六波羅密(ろくはらみつ・ろっぱらみつ)」があり、仏壇にお祀りする六種類のお供え物(お水、塗香、お花、線香、ご飯、灯明)は、その行いのシンボルになっている。

というお話です。
この六つのお供え物のうち、五つまでは簡単に手に入れることができますが、一つだけ、今まで在家の方にはあまり馴染みがなく、手に入れにくいものがありました。それが塗香です。

塗香とは、仏教で、心や体の汚れを除いて清めるために用いる粉末の良い香りのお香で、本尊様や仏壇などに向かう前に、少量を手や体にすり込んで使います。

六波羅蜜の一つとしての塗香は、身を清めるということから、「持戒」のシンボルになります。
持戒とは、戒律を守ることです。
自分を戒め、ルールを守って生きるということが、悟りをひらくための大切な実践なのです。
ここで守るべきルールとは、仏教徒として守るべき戒のことです。
例えば、「五戒」という、仏教徒が守るべき五つの戒の一つに、生き物を殺してはいけないという「不殺生」戒があります。
我が国の法律では、人については、殺人や傷害など、罪の重さとそれに対する罰が細かく定められていますが、それ以外の生きものについては細かく定められてはいません。
だからといって、法で裁かれない生き物は殺してよいと考えるのではなく、「命は全て尊いもの」という仏教の教えを守って不殺生を心がけていくことが大切です。
もちろん、全ての戒を守って生きるということは困難ですので、私たちがすべきことは、「戒を守る努力を行い、守れなかったことに対しては、自らを戒める気持ちを忘れずに日々を重ねていく」ことだと考えます。
不殺生についてなら、「すべてのいのちを奪わずに生きていければよいのだが、私たちは、他のいのちを体に取り込まなくては生きていくことはできない。だからこそ、自分が奪ったいのちに対する懺悔と感謝の心を忘れてはいけない。」ということになります。
いつか機会があれば、他の戒についてもご紹介させて頂きたいと思います。

これまでは、六つのお供え物のお話をする時、在家の方には手に入りにくい塗香の説明に一番苦労しました。
お寺でなら実際の塗香に触れてもらうことができるのですが、目の前に実物がない場所では、口頭で紹介してもうまく伝わらないこともあります。
また、塗香が手に入らないことを前提に、「お仏壇に向かうときは手を洗い、口をすすいで体を清めることによって塗香の代わりだと思って下さい。」という話をすることもありました。

しかし、最近、この塗香がブームとなり、一般の方にも比較的簡単に手に入るようになってきました。
塗香が注目を集めている理由は色々あります。
主な成分が漢方薬にも使われているものなので、消臭作用殺菌作用があることや、調合されている成分によっては体を温め肩こりに効くものもあるということ。
また、最近の大学の研究では、お香を嗅ぐことにより集中力が増し、リラックスする効果があることも認められています。
その上、様々な花の香りが調合されているものも増えたため、香水代わりとして使う女性も増えています。
また、男性でも、体臭を消すのに使う方もいるようです。
当山でもこの度、箸蔵山の桜のイメージでオリジナルの塗香を作成致しました。

このように、以前に比べて塗香が身近になってきたおかげで、僧侶としては六波羅蜜のお話がしやすくなってきました。
これから先、塗香が多くの方に知られるところとなり、その香りに伴い、六波羅蜜の教えも広がっていけばよいと願っています。

(追記)
箸蔵寺の塗香「桜の奥の院」は桜の香りです。箸蔵山にはソメイヨシノ、有明(御室桜)、御衣香、寒桜など、様々な季節ごとに山を彩る沢山の桜がありますので、この桜をイメージしたオリジナル香りの塗香を調合して頂きました。
また、ご本尊、金毘羅大権現様の本地が薬師如来様であることより、万病に効くと言われる龍脳も調合されています。
9月7日頃から授与開始の予定です。(授与価格800円)

 

今後も興味のあるテーマ、ご意見、ご質問等ございましたら、ご遠慮なく当山までご連絡ください。