菩提心41号 -八供養菩薩さまのお話-

第41号特集.-八供養菩薩さまのお話- (R4.11.21)

お大師様が日本にもたらした真言密教では、マンダラの中に沢山の仏様がいらっしゃいます。
多くの仏様が誰かの願いに応じて救いの手を差し伸べる中、誰かのためではなく、曼荼羅(=世界そのもの)に安らぎや彩りを与える仏様たちがいらっしゃいます。
それが八供養(はちくよう・はっくよう)菩薩さまです。

八供養菩薩さまは、在家の方には馴染みがない仏様たちかもしれません。
しかし、密教の修法を行う僧侶にとっては、実際のお花や灯りをお供えする(事供養)に併せて、八供養菩薩のご真言をお唱えする心の供養(理供養)は必ずといっていいほど用いられており、密教では欠かせない仏様たちです。

八供養菩薩は大きく分けて、金剛嬉(こんごうき)菩薩、金剛鬘(こんごうまん)菩薩、金剛歌(こんごうか)菩薩、金剛舞(こんごうぶ)菩薩という、曼荼羅の中心におられる大日如来さまが自分の周りの四如来様を供養するために生み出された「内の四供養菩薩(ないのしくようぼさつ)」と、金剛香(こんごうこう)菩薩、金剛華(こんごうけ)菩薩、金剛燈(こんごうとう)菩薩、金剛塗(こんごうず)菩薩という、今度は四如来さまの方から先ほどのお返しに大日如来様を供養するために生み出された「外の四供養菩薩(げのしくようぼさつ)」という二つのグループから成り立っています。
つまり、「大日如来さまが頑張っている四如来さまを癒やし、そのお礼に四如来さまが大日如来さまを癒やす」というお互いの気持ちから生まれた仏様たちが八供養菩薩さまです。

楽器を持った金剛歌菩薩さまが歌をうたい、金剛舞菩薩さまが舞い、金剛華菩薩さまが華で彩り、金剛香菩薩さまがよい香りを漂わせるというように、それぞれの菩薩さまが自らの力を以てマンダラの世界を華やかにしていきます。

このように、お互いを讃え、供養するということを「相互供養(そうごくよう)」と呼びますが、私たちの世界でも、このようなお互いを思いやる心が広がれば、みんなが楽しく穏やかに過ごせる世の中になっていくのではないかと思います。
また、誰かの徳を讃えるということは自分の徳を高めることにもつながっていきますので、相互供養の心は社会全体をより豊かなものに変えていきます。

また、マンダラの中の八供養菩薩さまの存在は、私たちの世界に向けて、「仏様の世界でもそうなんだから、頑張っている人は癒やされてもいいんだよ」というメッセージを頂いているように感じます。
自分に厳しく頑張っている人こそ自分を認め、自らに癒やしを与えることが大切だと思います。

この度、お大師様御誕生一二五〇年となる令和五年に、徳島県の西部、三好郡市の真言宗の八つの寺院が集まり、日本で初めての八供養菩薩を勧請した「四国阿波八供養菩薩霊場」を開創することとなりました。なかなか思うようにならない今の世の中ですが、八供養菩薩さまを巡拝し御縁を結んで頂くことにより、皆様に癒しや安らぎがもたらされますよう心より願っております。

箸蔵寺による著作物の引用や転載の際は引用・転載元を明記していただきますよう、お願い申し上げます。

四国阿波八供養菩薩霊場公式サイト

http://www.hashikura.jp/8kuyou/