卯年の本尊、文殊菩薩様のお話

令和五年は卯年です。
卯年の本尊様は文殊菩薩様です。

真言宗のお寺では、文殊菩薩さまを御本尊としてお祀りしているお寺がいくつかあります。
また、文殊菩薩様が御本尊様ではなくても、お釈迦様を本尊様としてお祀りしているお寺では、お釈迦様の両脇に仏様がいる場合は一方が文殊菩薩様でもう一方が普賢菩薩さまです。
(ちなみに、獅子に乗っているのが文殊菩薩様で、象に乗っているのが普賢菩薩様ですので、見分ける参考にして頂ければ幸いです。)

文殊菩薩様は「三人寄れば文殊の知恵」ということわざでよく知られているように智恵を司る仏様として有名で、お姿の中にも智恵を表す持ち物が見られます。
一般的なお姿では、右手には煩悩を断ちきる利剣智恵の剣)を持ち、左手には正しい教えを広めるために経典を持っています。

私たちの世界でも、文殊菩薩さまに習って「正しい知恵に基づいた努力」が大切だと考えています。
例えば、スポーツの世界では、以前はマラソンなどで水を飲まないことが正しいこととされていましたが、現在は水分補給をしなければ危険だという考え方に変わっています。
他にも、私の子供の頃には部活動でウサギ跳びをたくさんやらされていましたが、今は膝に悪いということで一切使われていません。
このように、正しい知識を持って行わないとせっかくの努力が逆効果になってしまう場合もあります。
特に、日本人は努力することは得意ですが、中には「頑張ってさえいれば良い」と考えてしまうことによって「何をどう頑張れば良いか」という頭を使うことに蓋をしてしまう人もいますので、「心や身体が頑張る」のと同様に「頭も頑張る」ということを大切にしなければならないと感じます。

また、昔は「どれだけ多くの情報を集めるか」ということが大切でしたが、現代社会では、「溢れる情報の中からいかに正しい情報や自分に必要な情報を選び出すか」ということが求められます。
今はSNSなどで、誰もが自由に自分の考えを発信できる時代です。
その中には一つのテーマに対して正反対の考えの発信もあれば、あえてフェイクニュースを流して混乱させてやろうという悪意を持った発信もあります。
このような時代だからこそ、文殊の利剣の如く、誤った情報や間違った方向への誘惑を断ち切って正しい道を見つけていきたいものです。

令和五年もはや一ヶ月が過ぎようとしています。
相変わらずコロナ禍であったり世界情勢が不安であったりと様々な問題を抱えていますが、文殊菩薩様の知恵で様々な問題が解決される年となりますよう心より願っております。

2013年より書き始めた干支の御本尊さまのお話も今年で一回りしました。
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