第1号特集-お葬式とは-

第1号特集 .お葬式とは (H10.3.15)

○はじめに
「菩提心」第一回目のテーマは、お葬式です。どんなに健康な人でも必ず死は訪れるものです。いくら避けようとしてもこれだけは絶対に避けては通れないものです。そこで今回は、人生の締めくくりの儀式であるお葬式の意味を改めて見直し、お葬式とは何か、何のためにするのかを考えていきたいと思います。

○亡くなった方のための儀式
お葬式の最も重要な役目は、亡くなった方に成仏してもらうということです。これは最も宗教的な部分で、僧侶がいなくてはできない部分です。  真言宗では亡くなった方を成仏させるために「引導作法」というものを用います。
いきとしいけるものはすべて仏様の本性(仏性)を持っています。しかし、どんなにすばらしいダイヤモンドの原石でも磨かなければ光り輝かないのと同様に、たとえ仏性があっても自分で磨く努力をしなければ生きているうちにそれを引き出すことができません。特に生身の体のうちは、様々な欲望や執着があるため、なかなか悟りに至ることはできないものです。引導作法は死者の内なる仏性を目覚めさせ、仏様の世界(悟りの世界)へ導くためのものです。
まず導師は、死者を仏様の弟子(仏弟子)にして、守るべき戒律を授け、名前(戒名)を授けます。キリスト教の信者は生きているうちに洗礼を受け、クリスチャンネームをもらいますが、仏教ではそれと同じようなことを、引導作法で行っているのです。 (参考までに、真言宗でも生きているうちに仏様と縁を結ぶ「結縁灌頂」や、生前に戒名をもらう「逆修」というものがあります。これらは一般的にはあまり知られていないようです。)
その後、導師によって即身成仏のための重要な作法が行われ、死者を悟りの世界に導くのです。
このように、亡くなった方に宗教的な方法で成仏してもらうということがお葬式の持つ、最も根本的で大切な意味だといえます。

○残された人のための儀式
一方、お葬式にはもう一つの大切な意味があります。それは残された人々のための儀式という意味です。
身近な人が亡くなるということは本当に悲しいものです。しかし、どんなに悲しんでも亡くなった人は戻ってくることはありません。ですから、お葬式で生前親しかった人達を集めて、はっきりと別れを告げることにより、もう二度と帰ってこないという心のけじめがつけられ、前向きに生きていく努力をすることができるのです。  また、身近な人が亡くなるときほど死というものを実感するときはありません。いつか必ずやってくる死というものに怖さを感じる人も少なくないでしょう。しかし、死と正面から向かい合ったとき、人は残された人生をどう生きればよいかを真剣に考えるものです。死を正面から見つめると言うことは、すなわち生きていることのありがたさを見つめるということです。
このように、お葬式には、死者との決別、死というものの再認識、いかにして生きるかの再確認といった、残された人たちが強く生きていくための意味も含まれているといえます。

○おわりに
近年、いろいろな形のお葬式が世の中に現れてきました。しかし、どんなお葬式でも、亡くなった方に幸せになってほしいという気持ちと、残された人たちが幸せになるために努力しようという気持ちの両方が必要だと思います。

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