第3号特集-お仏壇と六波羅密-

第3号特集. 特集 お仏壇と六波羅密(H11.3.15)

○はじめに
お家にお仏壇のある方は多いと思います。しかし、お仏壇に供えられている物の本当の意味をご存じの方は少ないのではないでしょうか。今回はお仏壇に供えられている物がどんな意味を持っているのかを紹介していきたいと思います。

○六つのお供え物
現在のお仏壇にお祀りされている物は、お水、お花、お線香、ご飯、ロウソクの五種類が一般的ですが、お大師様はこれに塗香(体に塗る香)を加えた六種類のお供えが大切であるとおっしゃっています。そしてこれら六つのお供え物は、
一、閼伽(水)
二、塗香
三、華鬘(花)
四、焼香(お線香)
五、飲食(ご飯)
六、灯明(ロウソク)
の順に「六種供養」と呼ばれ、それぞれ深い意味があるのです。

○六種供養の意味
それでは、六種供養にはどのような意味があるのかを紹介していきましょう。

一、水(閼伽)の意味
水には全てのものを平等に慈しみ養う慈悲の徳があります。これによって、私たちは水から平等に施す布施の徳を学ぶことができます。

二、塗香の意味
塗香には汚れ、臭いを清めて身心を清涼にする働きがあります。これによって私たちは塗香から身心を清め戒律を守ることの大切さを学ぶことができます。

三、花(華鬘)の意味
花は種より生じて厳寒厳暑に耐え、花を咲かせます。そして花を見る人の心を安らげ、怒りを静める力があります。これによって私たちは花より苦痛に耐え忍ぶことを学ぶことができます。

四、お線香(焼香)の意味
焼香は一度火がつくと消えることなく最後まで燃え尽きます。これによって私たちは焼香から真実の道をたゆまず実践することの大切さを教えられます。

五、ご飯(飲食)の意味
空腹は人を怒りっぽくさせますが、食事をとると心が落ち着き、精神が安定します。これによって私たちはご飯より精神を統一し安定させることの大切さを学ぶことができます。

六、ロウソク(灯明)の意味
ロウソク(灯明)には闇を除き全てを明るくする(除暗遍明)力があります。これは仏様の知恵が私たち全ての迷いを除き、悟りを導くことにたとえられます。これによって、私たちは灯明より迷いなき真実の知恵を得ることの大切さを教えられます。

私たちはこれら六つの供養より、
一.布施、与えること(布施)
二.戒律を守ること(持戒)
三.苦難に耐え忍ぶこと(忍辱)
四.真実の道をたゆまず実践すること(精進)
五.精神を統一し安定させること(禅定)
六.迷いなき真実の知恵を得ること(智恵)
という六つの大切な教えを学ぶことができます。そして、これら六つの徳目は総称して「六波羅密」と呼ばれ、仏教において涅槃(悟りの境地)に至るために実践しなければならないもっとも大切なことであるといわれているのです。
つまり、これら六波羅密の象徴であるお供えをした仏壇に向かうことが、実は自身が悟りを得るための修行になっているのです。

○おわりに
お仏壇はご先祖にお供えをし、先祖を弔うためだけのものではありません。仏様となったご先祖を拝むことにより、自分自身が修行させていただいているのです。私たちはこのことに気づき、よりいっそうの感謝の念を持ちお仏壇に向かわなくてはいけないと思います。

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