第6号特集-念珠のお話-

第6号特集 .念珠のお話(H12.12.5)

○はじめに
今回は仏教には欠かせない念珠(ねんじゅ)のお話です。数珠(じゅず)といった方が分かりやすいかもしれませんが、真言宗での呼び方は念珠が一般的ですから、こちらを使わせてもらうことにします。
また、念珠の持ち方や作法は、宗派によって違いがありますが、ここでは真言宗御室派で一般的に用いられている方法を基本にして話を進めていきます。

○念珠の歴史
現在では念珠は仏教徒の目印といわれるくらい、仏教にとって大切な道具になっています。
念珠は本来、真言や念仏などの数を数える道具でした。この数取りの道具をもっとも必要としたのがお大師さまの伝えた真言密教でした。
真言密教でもっとも大切なものは「真言」です。法事の時に「おんあぼきゃ べいろしゃのう・・・」と7回唱えている光明真言もその一つです。密教の修行ではこういった真言を何百回、何千回と唱えます。最高では一人で何日もかけて百万回も唱えることがあります。ですから、真言を間違いなく数えるために、念珠は無くてはならないものだったのです。
平安時代、日本に密教が広まるにつれ、念珠も広まっていきました。そのうち、いつも念珠を持っていると、本来の使い方以外に新しい使い方が生まれてきました。真言の回数を知らせるために念珠を摺ってみたり、その際に「仏さまに帰依します」と念じてみたり、さらにはお願い事をしてみたりと、現在の使われ方が誕生してきました。
このように、「数取り」の道具であった念珠はもっと深いところで真言密教と関わりを持つようになってきたのです。そして、その後の念仏の流行などにより、念珠は仏教全体に広まることになったのです。

○念珠の形
現在伝えられている念珠は、珠の数の多い方から千八十珠、百八珠、五十四珠、四十二珠、三十六珠、二十七珠、二十一珠、十八珠、十四珠の合計九種類があります。
千八十珠の念珠は「百万遍念誦」など、たくさんの人が輪になってご真言や念仏を唱えるときに使います。
次に、百八珠の念誦は「本連(ほんれん)」といわれ、プロのお坊さんが一般的に使うものです。房の付き方など、宗派によって違いがあります。珠の数は百八の煩悩を表すと言われています。大晦日に除夜の鐘を撞くときも、この「本連」の念珠を使って間違えないように数えています。
次に、五十四珠から十四珠までの念珠は、百八珠の念珠を簡略化したもので、現在「略式念珠」などと呼ばれています。特に、百八の半分の五十四珠のものを「半連(はんれん)」その半分の二十七珠のものを「四半連(しはんれん)」と呼んだりします。これらの略式念珠は一般の在家の人が使ったり、プロのお坊さんが法要のない時に持ち歩いたりします。宗派の違いはあまり無く、お店では十八珠から三十六珠位の珠数の念珠がたくさん売られています。

○念珠の材質
念珠の材質は、古くから経典に伝えられているものや、現在作られているものを合わせると、たくさんの種類があります。金属(金、銀、鉄、銅など)、石(水晶、瑠璃、メノウなど)、木や木の実(菩提樹、白檀、栴檀など)、サンゴ、琥珀、真珠、その他たくさんの材質があります。もちろん、ガラスやプラスチックの念珠も仏具屋さんに行くと並んでいます。 経典には菩提樹が最高と説かれているものが多いようです。やはりお釈迦様が悟りを開かれた木が最高ということでしょうか。また、水晶が一番と説かれている経典もあります。現在、真言宗では、大法要の時は水晶の念珠を持つ決まりになっています。

○略式念珠の持ち方
まず、左手の親指と人差し指の間に、房が下になるように念珠をかけます。次に右手を左手に合わせ、合掌の形になればできあがりです。合掌する場所は胸の前が良いでしょう。

○念珠についてのQ&A
最後に、念珠についてのよくある質問を紹介します。

Q. 念珠を他宗教のお葬式に持っていっても良いですか?
A. 念珠は仏教徒の証であるので、持っていった方がよいと思います。但し、その場の状況によって、自分の許せる範囲で相手の宗教に合わせてあげることも必要な場合があります。

Q. 念珠の貸し借りはして良いのですか?
A. 法事や葬式に忘れていった場合は仕方がありません。しかし、念珠をはじめから持っていない方は、仏教徒の証として自分の念珠を持つべきだと思います。また一説には持ち主の百八の煩悩や業を受け継ぐので、貸し借りはしない方が良いという考え方もあります。

Q. 最近、腕輪の形の念珠がはやっているようですが、正式な念珠なのでしょうか?
A. お年寄りから若い世代に至るまで、腕輪念珠を身につけている方をよく見かけます。しかし、珠の数も自由な上、本来の持ち方、使い方をするものでもなさそうです。どちらかというと念珠の形をした「御守り」と考えた方がよいのかもしれません。

Q. 別格霊場で授かった「二十ヶ所念珠」はお葬式や法事で使ってはいけないというのは本当ですか?
A. いいえ。お葬式、法事いずれの場合に使っていただいて結構です。また、自分が亡くなったときに、巡礼の時に着ていた白衣や、持っていた杖などと一緒に「二十ヶ所念珠」をお棺に入れてもらって旅だってゆく方もいます。

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