第7号特集-仏様とマンダラのお話-

第7号特集 .仏さまとマンダラのお話(H13.12.3)

○はじめに

皆さんは仏教にはどのような仏さまがいらっしゃるかご存じですか? 観音様、お不動様、地蔵様、それに・・・。
実は、仏教には何百何千もの仏さまがいらっしゃるのです。先ほど挙げた観音様を取ってみても、聖観音様、千手観音様、十一面観音様、馬頭観音様、他にも何十もの観音様がいらっしゃいます。
今回は、沢山の仏さまについて、真言宗の立場からご説明していきたいと思います。

○すべては大日如来さまから

仏教にはたくさんの仏さまがいらっしゃるように見えますが、実は、中心になるのは「大日如来」さまという、たった一人の仏さまなのです。たくさんの仏さまはその大日如来さまがお姿をかえて現れたものなのです。

ここに、Aさんという人がいるとします。
まずAさんが、「病気の人を救いたい」と考えて、お医者さんになったと思ってください。Aさんは白衣を着て首から聴診器をぶら下げて仕事をしています。その姿を見ると、人はAさんのことを「お医者さん」と呼ぶでしょう。

次に、Aさんが「犯罪をなくし、平和な国にしたい」と考えて、警察官になったと思ってください。Aさんは、警察官の制服を着て、制帽をかぶり、腰には警棒とピストルを持って仕事をしています。その姿を見ると、人はAさんのことを「お巡りさん」と呼ぶでしょう。

もちろん、お医者さんになっても、お巡りさんになっても、AさんはAさんであることに変わりはありません。お医者さんも、お巡りさんも、Aさんがその目的のために服を着替え、仕事をしている姿なのです。

つまり、真言宗では、大日如来さまという仏さまが、私たちの様々なお願いに応じてそのお姿を変えられたのが、観音さまやお不動さま、その他たくさんの仏さまなのです。Aさんは人間ですから、服を着替たり、道具を持ったりすることしかできませんが、大日如来さまは、お願いに応じてお姿を変えること、つまり「変身」することができるのです。
そして、大日如来さまが変身された、たくさんの仏さまを、その目的や、持っているお力によって並べ、まとめたものが「マンダラ」なのです。

○マンダラの仏さま

マンダラの世界には沢山の仏さまがいらっしゃいます。じっと悟りの境地にいらっしゃる仏さま(如来)、私たちを救うために活動する仏さま。その中には、優しく導く仏さま(菩薩)もいれば、厳しく叱ってくれる仏さま(明王)もいらっしゃいます。それに、仏教を守護する仏さま(天部)。これらたくさんの仏さまによってマンダラの世界ができあがっているのです。

マンダラの世界にはケンカはありません。もちろん、天部の仏さまが如来さまをうらやましがったりすることなど絶対にありません。なぜなら、すべての仏さまは、大日如来さまがお姿を変えて現れた方々だからです。同じ思いを持って共に進んでいく方々だからです。全ての役割が尊い役割で、どの仏さまがいなくなってもマンダラは成り立ちません。必要のない仏さまなど一人もいないのです。

○マンダラに学ぶ

私たちの世界でも、同じ目的のために集まっているたくさんの組織があります。会社、病院、自治体、ほかにも挙げるときりがありません。ところで、これらの組織って、同じ目的のために色々な役割を持った人が集まっているところがマンダラによく似ていると思いませんか? 色々な立場の人がお互いの幸せ、みんなの幸せのために努力をすると、素晴らしい力を生み出すことができるのではないでしょうか?

家族だってもちろんそうです。親も子も兄弟も、お互いを思いやり、いたわり合い、感謝の気持ちをもって接すれば、きっと明るく楽しい家族マンダラができあがると思います。

もっと広い目で見れば地球だって大きなマンダラです。私たちの地球マンダラを生かすも殺すも私たち次第です。「自分さえよければ」という気持ちが自然を壊していきます。すべての人が、地球を愛し、自然を愛し、生きとしいけるものすべてを大切に思って共に進んでいくことが、今の私たちのため、未来の子供達のためになるのです。

○おわりに

最後はいささか大きな話になってしまいました。
しかし、これをきっかけに、仏さまのこと、マンダラのことを少しでも身近に感じていただけるとうれしいです。

今日のお話は真言宗の立場からのお話です。禅宗や浄土真宗などの他宗派の方、真言宗でも他宗派の法事などに行かれる方は、また違ったお話しを聞くことがあるかもしれません。その時には「同じ仏教でも、色々な見方があるのだな」と、この話を思い出して比べて頂けると幸いです。

(以上)

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