アイデアを形に(1) 繰り出し台座

関係のない方には全く興味がない話かもしれませんが…

僧侶を続けていると、使っている仏具や仏教関連の物に
「こんなものがあれば便利なのに」とか、「もっとこうした方がよいかもしれない」というものが少なからずあります。

このようなことを考えているうちに思い立って試作したものや、物作りをしている方と話をしているうちにこちらのアイデアを取り入れて頂き、「形になったもの」がいくつかありますので、少しずつご紹介していきたいと思います。

最初にご紹介するものは、10年ほど前に考案したものです。

お位牌の中に「繰り出し位牌」という種類のものがあります。
お仏壇のに一人一基ずつお位牌を並べると場所に限りがあるため、ご先祖様の多いお家は仏壇が一杯になってしまいます。
そこで薄い板状のお位牌を重ねて入れておくという「繰り出し位牌」という場所を取らない形態の位牌が考案されました。(Google画像参照

繰り出し位牌は、命日のご先祖様のお位牌(板)を一番手前に持ってきて使います。
これの良いところは、たくさんのお位牌を場所を取らずにお祀りできるところですが、不便なところは法事で一度に二人以上の方を拝むときは土台がなく板だけになってしまうことです。
そのような時、私たちの地元では、大根などの野菜を土台にして上に切れ目を入れて繰り出し位牌を挟み、祭壇にお祀りしていました。(位牌の下に野菜のシミがついてしまうことも…)
また、木片に溝を掘ってそれに繰り出し位牌を立てている檀家さんもいらっしゃいました。
皆さんご苦労されていたようです。

そこで、せっかくの法事の祭壇に、主役のお位牌を少しでも丁重にお祀りする方法はないかと貸し出し用の繰り出し位牌用の台座を考案しました。
当時、別格霊場会にご縁のあった仏壇屋さんにたまたまその話をすると、「ぜひ作らせてもらいたい」と仰っていただいて、アイデアが形になりました。

箸蔵型という名前をつけていただいたのにはびっくりしましたが…

この辺りでは、法事の前に檀家さんがご本尊様(十三佛のお軸等)をお寺に受け取りに来るという風習がありますが、そのときに繰り出し台座も一緒にお貸しします。

先住忌(お寺の以前の住職の法事)の時、お呼びした寺院方への引き出物にするとたいそう喜んでいただけました。
また、法事の後、気に入ってくれた檀家さんから是非とも貸し出しではなく家専用に欲しいと仰っていただいたことも。

何かしらお役にたてるものを生み出せて良かったと思っています。