修験道の袈裟のお話

一昨日、当山の箸供養柴灯護摩、無事厳修することができました。
土用の真っ只中でしたが、時折小雨降る比較的涼しい天気で、暑すぎなかったことは本当によかったです。

以前、真言僧侶のなり方について少し書かせて頂きましたが、今回は、柴灯護摩にちなんで修験道の袈裟についてご紹介致します。

修験の袈裟には大きく分けて二種類あります。
これは、現在は様々な流派に分かれている修験道も、元をたどれば、真言系の当山派(または当山方)と天台系の本山派(本山方)からなり立っているからです。

まず、真言系の袈裟は、磨紫金(ましこん)袈裟、修多羅(しゅたら)袈裟など、輪宝(りんぼう)という法具が取り付けられれている輪宝袈裟です。

写真は磨紫金袈裟で、資格取得の際に、当山方修験道の総本山から頂いたものです。
金の輪宝が取り付けられています。
当山方の柴灯護摩では大儀師(導師にあたるもの)以外の行者さんは皆、輪宝袈裟を着けます。

次に、天台系の袈裟はフワフワの梵天(ぼんてん)がついている梵天袈裟というものです。

右下は先日の箸供養です。
不思議に思われる方がいらっしゃるかも知れませんが、真言系の柴灯護摩では大儀師だけは天台系の梵天袈裟を着用するのです。

この理由は、私の修験道の師僧から教わった話を簡単にまとめると、

安土桃山時代、当山派と本山派の対立、諍いが激しくなった時、時のお偉い方が間に入って仲直りをさせた。
その際、和解の印として、どちらの流派も柴灯護摩を焚く時には、大儀師だけはそれぞれ相手の流派の袈裟を着けるという取り決めができた。

ということです。
何か、サッカーでキャプテン同士が相手とユニフォームを交換したような感じです。
…もちろん、サッカーでは次の試合も交換したままで出ることはありませんが(笑)

天台系の本山派は、現在はその取り決めは今は無くなっているように聞いていますが、真言系の当山派は今もそれを守り続けています。

もう一つ、師僧から伺った話を参考までにご紹介すると、

和解の際、当山派の柴灯護摩で起こした火を採取して本山派の柴灯護摩を行ったことから、当山派は「柴」灯護摩、本山派は「採」灯護摩と言われる。

のだそうです。
聖火リレーが行われていたのですね。
元をたどると色々興味深い話が隠されています。

それ以外にも、真言系と天台系の違いは壇の組み方など、本来は様々な違いがありますが、時代の流れにより、今は混じり合っているところも多いです。