二つの曼荼羅

先日、公式サイトで、来年の干支の本尊様、阿弥陀如来様のお話を書かせていただきました。(戌年の本尊、阿弥陀如来様のお話)
その中で、五智如来様についても紹介いたしました。

一、「大円鏡智(だいえんきょうち)」をもつ阿しゅく如来。
二、「平等性智(びようどうしょうち)」をもつ宝生如来。
三、「妙観察智(びょうかんざっち)」をもつ阿弥陀如来。
四、「成所作智(じょうそさち)」をもつ不空成就如来(=釈迦如来)。
五、以上四つの智恵を全て兼ね備えた智恵「法界大性智(ほうかいたいしょうち)」をもつ大日如来。

この記事に対し、SNSで「一番と二番の如来様達が他のお三方に比べて極端に知名度が低い(と、私が思ってるだけかもしれませんが 汗)のは何故なのでしょう?」というご質問を頂きました。
SNSにお答えをと思っていたのですが、書いている内に内容が膨らんできたので、一つの記事としてこちらにアップしたくなりました。

(以下、回答です。)

密教の仏様の多くは、仏様の持つ智恵を表す金剛界曼荼羅と、仏様の慈悲を表す胎蔵界曼荼羅のどちらか(あるいは両方)にいらっしゃいます。

私たちは、お願い事をしたり救いを求めたりするので、慈悲の曼荼羅にいらっしゃる仏様の方が、お寺の本尊さまにもなりやすく、馴染みが深いのだと思われます。
(観音様、文殊様、弥勒様、お不動様、他にも皆さんご存知の多くの仏様が慈悲の曼荼羅にいらっしゃいます。)

五智如来は、名の如く、智恵の曼荼羅の仏様ですので、なじみが薄いのも仕方がないかと思われます。

ちなみに、五智如来様のうち、
三番目の阿弥陀如来様、五番目の大日如来様はどちらの曼荼羅にもいらっしゃいますし、大日如来様は密教の根本の仏様です。
また、四番目の釈迦如来様は、「人としてこの世に現れて、私たちに生きる智恵を与えて頂いた」という意味では、智恵の曼荼羅の中では最も深い関わりがあるといえるかもしれません。

また、一番目の阿しゅく如来様も、色々な解釈があります。
実は、皆さんよくご存じの薬師如来様は、どちらの曼荼羅にもいらっしゃらないのです。
この理由として「阿しゅく如来様が薬師如来様と同体か?」という考え方があります。
高野山の金堂の本尊さまに関連のある話ですね。
(他にも、「胎蔵界の大日如来様が薬師如来様と同体か」
という解釈などもあります。)

このように、何かプラスアルファの理由がないと、金剛界曼荼羅の仏様はあまり知られていないように思います。
ご質問を受けて、こういう視点の見方もあるのだなと刺激になりました。