ものの考え方あれこれ2

これまで、対機説法というテーマでいくつか雑感をアップしてきました。(過去の記事参照)

対機説法を行うためには、色々な考え方を認め、相手の気持ちになって考えることが大切です。
人はそれぞれ、色々なものの考え方を持っていて、知れば知るほど興味深い生き物だと思います。
いつもの宗教的観点ばかりではなく、時には脳科学や心理学の観点でも参考になるものがあります。

前回は私なりに考えた、「スタート基準かゴール基準か」という分け方と「違いを見つけるのが得意な人と共通点を見つけるのが得意な人」という2種類の分け方をご紹介しました。(参照)

今回は、「加点法の考え方の人」「減点法の考え方の人」の、2つの分け方です。主にスポーツで例えると分かりやすいかと思い、スポーツの例えを多くしていますが、スポーツ以外でも色々該当するかと思います。
一応ことわっておきますが、「加点法か減点法か」は、「プラス思考かマイナス思考か」や「ポジティブかネガティブか」という意味ではありません。

 減点法の考え方の人  加点法の考え方の人
「失敗しない」ということを重要視する 「何が出来るか」を重要視する
ミスをしないスポーツに向いている?
(ゴルフなど、最後まで崩れない者が成績を残す)
一発勝負のスポーツに向いている?
(走り幅跳びなど、1回でも大ジャンプを決めれば好成績)
自己分析は得意だが、ミスにこだわりすぎるとスランプに陥る ミスからの切り替えが得意だが、失敗よりも成功に目が向くので反省は苦手かも
新しい技は完成度が高くなるまでは使わない 新しい技はとりあえず使ってみる
堅実だが、度が過ぎると事なかれ主義になる可能性も チャレンジ精神があるが、ギャンブル好きの可能性も(笑)
安定して実力通りの結果が出る 相性によっては大番狂わせもあるが、裏を返せば大コケも
組織やチームの中で信頼されやすいが自分を殺す傾向にある 日本的な組織やチームプレイの中では不安要素になる場合も
「誰よりも努力をしている」ということが心の拠り所となる 「相手に出来ないことが出来る」ということが心の拠り所となる
うまくいった時、喜びと同時にホッとする うまくいった時、とにかく喜ぶ

あくまでも個人の見解ですが、このような傾向があるように感じられます。
そして、これまでの日本人のものの考え方には「減点法」がマッチしているような気がします。
キーワードは「努力」と「自己責任」。
日本人は「努力は裏切らない」ということばを大切にし、技術だけでなくメンタルにおいても「失敗するのは自分のせい、自分の努力が足りないから」と考えがちです。
そして、特にチームプレイでは、自分が失敗するとチームに迷惑がかかると考え、さらにメンタルを追い込んで、結果普段通りの力も出せなくなってしまう人も少なくありません。(このあたりが減点法の考え方が強すぎる人が陥りやすい弱点でしょうか。)

しかし、欧米では異なる考え方も存在します。
以前、女子バスケの東京オリンピック代表の林選手のインタビューを見る機会がありました。
林選手は最初、3ポイントの調子が悪いときは自分で打たず、チームのためを考えて誰かにボールを回していました。
その林選手に代表監督(アメリカ出身)のトム・ホーバスさんがかけた言葉が凄く心に残っています。
「打たないのはワガママだ。自分の与えられた役割を、調子が悪いからと言って放棄するのはワガママだ。」
という言葉です。
これはなかなか日本人からは出ない言葉であり考え方だと思います。
私なら、3ポイントを打つ方が良いと思った場合にかける言葉は「外しても気にするな。打っていれば入るようになるからどんどんいけ」位しか思いつきませんでした。
そして、逆に自分がう言葉をかけられたとしても「気にするなと言われたって気になるよ」と思い、その罪悪感からなかなか調子は戻らないと思います。
しかし、「打たないのはワガママだ」とまで言ってもらえれば、「外す罪悪感」は「打たない罪悪感」にシフトし、打つためにメンタルを安定させようとする「努力」から解放さます。
その言葉で意識改革ができた林選手は、オリンピック準決勝で劇的な3ポイントを決めるなどの大活躍をするようになります。

また、失敗に対する意識も日本と外国では異なる場合があります。
日本人は失敗したとき、「自己責任」の考え方から、悔しがったり、落ち込んだり、自分に向けて怒りを表したり仲間に謝ったりします。
しかし、欧米の選手の中には自分を責めず、仲間にも謝らない人が多いです。
昔、ナンバーズで「日本人は場の空気に謝り、信仰を持つ海外の人は神の所行と対話する」という内容の記事を読んだことがありますが、日本人は自己責任を感じ、対して(信仰を持つ)海外の人は「外したのは神が定めたことなので誰かに責められる必要はない」と考えるとのこと。
だから、責任問題という意識がない…言い換えるとメンタルが強いのではなくメンタルの仕組みが違うのです。
このような「考え方のシフト」だけで緊張や責任から解放されるのであれば、努力や自己責任にあまりにも囚われすぎて本番でせっかくの力を発揮できない人には一つの解決方法になるかもしれません。

以上の例は、欧米を見習えという意味ではありません。(努力をそのまま自分の自信につなげることが出来る人には必要の無い例です。)
どの考え方が正しくどの解決法が正解という話ではなく、世の中には自分以外の色々な考え方があるということのご紹介です。
そして自分がどのタイプかを考え、それぞれの長所や弱点、対処法を把握することにより、今が少しでも生きやすくなれば、という意味の投稿と理解して頂ければ幸いです。

今回は、「加点法の考え方の人」と「減点法の考え方の人」の、2つの分け方について考察させて頂きました。
深く検証したわけではないので、時と共にまだまだ考えも変わっていくかもしれませんが。